‐月のしずく‐
バスはゆっくりと揺れて、走っていく。

なぜか今日に限って渋滞で、こっちまでぎゅうぎゅうで息苦しくなった。


ふと、隣に視線を移した。

一瞬、心臓が跳ねた。


春日が窓に寄り掛かり、膝を抱え込んで寝ていたのだ。

太陽の日差しで反射し、春日の白い肌は綺麗に見えた。


安らかにスースーと眠っていて。


よっぽど疲れてたのか、無理もないな……。


俺は無意識に、クスクスと笑っていた。



「なーに、一人で笑ってんだよ。気色わりぃ……」

突然上から、機嫌の悪そうな声がした。


上を見れば、暑いせいかぶすっとした顔のミッチーが俺を睨んでいた。


「………別に」

「こんなところで、雫ちゃんを襲っちゃダメだぞ〜?」

「誰が襲うかっ!!」


ミッチーがニヤニヤとしながら変なこと言うから、俺はつい、怒鳴ってしまった。


その時、周りの皆が俺を、まるで変質者かのような変な目で見てきた。

俺はその視線がものすごく痛く、俺はう゛っと気まずくなってしまった。


「や〜ん、知也くんの変・態♪」


オカマ口調+体クネクネと、なんともキモいミッチーに。


「……………」


…はあ。

俺はもう、何も言えません。


ちらっ、と春日を見る。



どんな良い夢を見ているのか、春日は微笑んでいた……。

.
< 17 / 35 >

この作品をシェア

pagetop