‐月のしずく‐
「はぁっ、やっと着いた〜!!」

ずっと座っていて鈍っていた体を背伸びする。

うーん、気持ちいいっ。


やっと目的地に着いた時は、昼を過ぎていた。

本当は、とっくに昼前に着くはずだったのにさ……。


時間が狂い、予定が変更した。


先に俺達が泊まるホテルに、移動することになったのだ。

先生に言われ、俺と春日は指示する。


はぁ、何でこんなにめんどくせぇこと……。


俺は全員いるか確認しながら、気がついた。

…あれ?


春日が、いない…?


俺は慌てて、ばっと周りを見渡した。


だが、そう慌てる必要はなく、春日は少し離れた所にいた。

近づいてみると、春日はこの少し高い場所から見える景色を見渡していた。


それは、切なそうに。


なぜ?

どうして彼女はいつも、ふと悲しいばかりの顔になるのだろう。

その顔の裏の理由には、何があるというのだろうか。


好きな奴のことを何も知らない自分に……心が痛め付けられた。


俺はゆっくりと足を進め、春日に声をかけた。

「……春日」


すると春日は、はっとしたように俺に振り向いた。

「な、なに?」

「なに、じゃねぇよ。委員長の仕事、忘れんな」

「あ、ごめんっ」


春日は謝ると、走って戻っていこうとした。

だけど俺は、咄嗟に腕を伸ばし、彼女の腕を掴んだ。

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