‐月のしずく‐
「我慢…してたりしないか? 本当の気持ちを」


俺は手をにぎりしめて、春日に目を向けた。


…春日は顔を伏せていて。



言いたいことを言った俺は少し、不安に刈られてしまった。



冷たい風が、二人を通り掛かる。



「……………」


スッ、と無言のまま、春日が立ち上がった。


俺は目を追う。


ずっと背中を向けた春日に、俺は尚更、不安だらけ。



すると春日は俺に振り返った。


それに俺は、情けないことにビクッとなってしまった。



「………阿部も、月に狂わされちゃった?」


俺をおかしそうに見ながら笑う。


「へ?」


それに俺はなんとも、マネケな声を出してしまった。


また春日は、クスッと笑って。


「そっか」

「春日?」



俺が再度春日を見た時にはもう、彼女は“いつもどおり”な様子になっていた。

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