‐月のしずく‐
「春日に泣いてた理由とか聞いたんだ、勇気出して。だけど答える春日は、意味がわからなくてさ。尚更……彼女のことが、わからなくなったよ」

「……ふーん」



苦笑しながら言うと、ミッチーは口を尖らせて、何か考え出した。


……しかし、コイツ食べる量ハンパないな。


俺はそれに、呆れていた。



「心の中に、何か潜めてるとか……」

「は?」


いきなり呟くように言ったミッチーのその言葉に、俺は意味がわからなかった。


そんな俺を見て、ミッチーは笑った。


「いや、いたんだよね。そーいう人。本性がわからないその人は……心の中に消えない傷を負ってたの」

「……消えない傷? その人って、誰だ?」

「ナイショ」


ミッチーは、口唇に人差し指を当てながら言った。


ドキンッ

あの時の春日と、重なる……。


そして、心の中に、か。



じゃあ、春日も?


「確信があるわけじゃないよ。ただ、そういう人がいたっていう話。それに、傷を負ってるとかわからないし……」

「なるほど」


そう言い切ると、ミッチーは夢中に食事を再開した。


俺はミッチーを見て思った。


ミッチーは普段ふざけたりするけど、いざとなると真面目になりながら納得できることを言う。



俺はそういうとこ、ひそかに尊敬するなー。

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