‐月のしずく‐
修学旅行なんて最初は本当、長いと思っていたけど、実際はあっという間。


もう気がついたら、最終日。


なんか…変な感じだな。



「阿部」


ふと名前を呼ばれ、後ろに振り返った。


そこには、一人の男。


俺はソイツを見た瞬間、嫌そうな顔を丸々していると自分でもわかる。

ソイツははぁ、と頭を抱えながらため息をつきながら言う。


「俺が嫌いなのはわかるが……。春日が手を離せなくて、相当困ってたし、怒ってたぞ。早く行け」

「げっ、マジで?」

「ああ。さっさと行け」


言いたいことを言うと、ソイツは俺に背中を向けて、去っていた。


…はあ。

相変わらず、苦手な男だ。



ソイツとは……風間蓮。


風間は隣のクラスの委員長。


これが悔しいことに、奴は成績優秀・容姿端麗オマケに生徒会長で、学園のアイドル。

こんなの、マジでありえねぇし……。


だけど、性格に問題があって。


俺はその性格が苦手。


何事にも冷たく、何か人に寄せ付けない……オーラがある。

まぁ、そこがまたイイっていう人もいるけど。


俺には、どこがいいのかさっぱりわからない。

…わかりたくもないけど。


まさに、“最強”だと思う。



俺はため息をつきながら、急いで春日の所へ行った。

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