‐月のしずく‐
 
さっきミッチーが言ってた通り、7月に修学旅行がある。

委員長の俺は、その計画とかに引っ張り凧でものすごく、忙しい。


いろいろ作んなきゃいけないし、班を決めなきゃいけないし、計画表を考えなきゃいけないし……と。


そのせいで毎日、帰りは遅くなる。



本当、マジでありえねぇし……。



「阿部? アンケート集計、終わったの?」


ドキンッ

その声に、一瞬心臓が跳ねる。


ドアから黒のロングヘアを靡かせて、こちらに来たのは、春日。


「い、いや。まだだ」

「まだ? 何してんの、遅い。貸して。私も手伝うから」


呆れた顔をしながら、春日は俺の前の席に座った。

そして俺から紙を取り、手際よく作業をしていく。


それを俺は、ぼーっと見ていて。


彼女のすべて…真剣な目、綺麗な字、そんな字を書く、白い手。



「……………っ」


俺はそんな彼女から、視線を逸らした。


……近くにいる、たったそれだけのことに俺は、変に意識してしまった。



一体、どうしたんだ…俺。

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