‐月のしずく‐
すべての作業を終えた頃には、もう外は真っ暗になっていた。


「うわー。真っ暗だ」


彼女が俺の隣で、そう呟いた。


「怖いか?」

俺はいつの間にか、ニヤニヤしながらそう春日に言っていた。


春日はぎょっと目を見開いて驚き、ムスッとした。


「別に怖くなんかないわよっ。何よ、そのニヤニヤした顔は!」

「別にー」


俺は腹を抱え込んで笑っていた。

春日の顔が面白くて、可愛くて、もっと見たいって思った。


……って、ちょっと待て!!


可愛いって、なんだよ?!


今までなんにも意識してなかったのに本当、明らかに変だろっ?


これじゃまるで、俺が春日を好き……って。


はあぁあぁぁあ!?


好き?

俺が春日を?!


ありえないって!!



「なに一人で百面相してんのよ」


春日のその声に、俺は我にかえった。



春日はまだ、ムスッとしていた。

.
< 7 / 35 >

この作品をシェア

pagetop