inosence
第1章
その日は静かな白い季節のはじまりだった。
「風香(ふうか)!今日あたらしい数学の先生が来るみたいだよ」
「そうなんだ…こんな11月に?」
「うん。男の先生だといいよねっ」
中学からの友達のエミが期待を満面に表してわくわくしている。
わたしもどんな先生が来るのか楽しみだった。数学は苦手だから、教えてくれるひとがふえるとありがたいなぁ。
机の中から数学の教科書とお気に入りの水玉模様のノートを出す。
「最近さ、カップルふえてきたよねー。独り身には目の毒だよ」
エミがふざけて笑う。
わたしもつられて笑って、ほんとにそうだねと相づちをうった。
高校生活も二年目になって慣れてきたからなのか、彼氏彼女の関係に変わったひとが多くなった。
手をつないで一緒に登校したり、休み時間にじゃれあったり。
そんな様子を見てしまうと、ひどくうらやましく感じた。
そして、すこし前に別れた恋人さんのことを思い出してしまうんだ。
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