inosence


二ヶ月前まではわたしにも大切な恋人さんがいた。ネットで知り合って会ったこともなかったのに、一年近くもメールや電話のやりとりをしていた。

こんなに長く付き合っていたことはなくて、気がつけばとても好きになっていた。


…そう、好きになりすぎちゃったんだ。




「おーい、生きてる?」


気がつくとエミがわたしの顔の前で手をひらひらと振っていた。


「ご、ごめんね、ぼーっとしてた。あ、そろそろチャイム鳴るよ?」

「やばっ、戻らないと。じゃあね風香。授業中はボーッとしてたらだめだからね」


わたしは笑いながらわかってるよと返し、エミはとなりのクラスへ戻っていった。


去年はおなじクラスだったのに…半年近くたってもやっぱりさみしいな。

みんなたまに少し話す程度で、この教室に特に仲がいい、という友達はいなかった。

慣れたから大丈夫なんだけどね。



そのとき、いつものようにチャイムが鳴り響いた。

みんなも新しい先生が来るって知っているようで、どんな人か気になって落ち着かないみたい。


やがて数分たってから教室の扉が開いて数学担当の先生が入ってくる。

そこまでは昨日までと同じ。



だけど今日はその後に、別のひとが入ってきた。

男の先生だ…と思った次の瞬間。

空を映した海のような青い瞳に、視線を釘付けにさせられる。


え…すごく、綺麗。





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