ロマンチックに欠く女


「…はい?先輩頭大丈夫ですか?」



「…大丈夫じゃないからお願いしてるんじゃないか」




俺の懸命な提案に、彼女はさらに罵倒を浴びせる。いや、俺も実はちょっと無理があるなとは思ってたんだよ。
でも、この提案なら、彼女は俺の傍に居てくれるし、絶対至近距離で見つめ合えるし、あわよくば家にお呼ばれ…とか考えてるわけで。もちろん、俺の家に来たいなら歓迎するけどね。ベッドの掃除もしておくけどね。



「…先輩が何を企んでるかは知りませんけど、それでも私に勉強教えてというのは無理があるでしょう?」




―――そう、俺のもう1つの提案とは勉強会のことだった。

現在隣を歩く彼女は、やはり美しい。…じゃなくてだな。

最近バラをプレゼントしても前ほど嬉しそうな顔をされず、俺の元気が無くなってきたのを見兼ねた店長がシフトを少しずらしてくれたのだ。おかげでこうして彼女と下校することが出来ている。それは良かった。やはり俺と日向に愛の女神が囁いていることは間違いないと見た。


だからこそ、だ。




「企んでるだなんて失敬な!俺は日向のことしか頭にないよ」



「話が通じてませんね。脳外科行って下さい」



「頼む!日向に教えてもらいたいんだ!勉強全然分かんなくて1年から復習しろって言われたんだよ!」



「ご愁傷様。頑張って下さい」




ダメだ。取り付く島もない。
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