”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
9.涼の崩壊
*
限界だ、と思った。
そして、もう、うんざりだった。
代わりに違う女を抱いて、誤魔化し続けることに。
綺樹の首筋に顔を埋めて、あの香りを感じたかった。
それだけでいい。
優しく腕を回してくれれば、その先は望まない。
何日ぶりか分からない屋敷に涼は車を向けた。
出迎えた執事の藤原は、毎日繰り返されているかのように自然に迎えた。
上り慣れた階段を上がり、プライベート用のリビングに入る。