”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

綺樹がいた。

確か予定ではパーティーが入っていたと思った。

もう帰っているとは思わず、しばしドアの所で足を止めてその姿を眺めた。

フランス窓を全開にして風をそよいでいる中、ソファーに座わり、明かりを点けず、月の光を受けて、ぼおっとしている。

今夜は満月だ。

部屋の中は冷え冷えとした光で一杯だった。


「おかえりなさいませ」


涼に気が付いて、綺樹は首をかしげ、わざとらしく微笑をして見せた。


「そっちも」


綺樹は昨日、どこからからか帰ってきたばかりだった。

綺樹はくつくつと笑って片足を抱き抱えた。
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