”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
綺樹は自分の手が震えているのに気が付いて、グラスを飲み干した。
「暗くないのか?」
涼はスイッチを押した。
まぶしそうにまぶたをやや伏せていたが、慣れるとグラスに再び壜から注いでいる。
ウィスキーとは珍しい。
綺樹が相当飲んでいるらしいのがわかった。
動きの怪しい手元に、壜の中身が少しかかる。
大きな音と共に壜がテーブルに置かれると、綺樹はグラスを反対の手に持ち替えて、口をつけた。
いつもの白い横顔が、紙のように不自然な白さだった。
なんだか茫然としているようだった。