”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

綺樹は自分の手が震えているのに気が付いて、グラスを飲み干した。


「暗くないのか?」


涼はスイッチを押した。

まぶしそうにまぶたをやや伏せていたが、慣れるとグラスに再び壜から注いでいる。

ウィスキーとは珍しい。

綺樹が相当飲んでいるらしいのがわかった。

動きの怪しい手元に、壜の中身が少しかかる。

大きな音と共に壜がテーブルに置かれると、綺樹はグラスを反対の手に持ち替えて、口をつけた。

いつもの白い横顔が、紙のように不自然な白さだった。

なんだか茫然としているようだった。
< 191 / 241 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop