”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

「飲みすぎじゃないか?」


涼は歩み寄ると、壜を手に取り、綺樹から遠ざけた。

無言でその動きを目で追っている。


「ワインじゃないんだな」


探るように綺樹の顔を見つめた。

この変化は男絡みか。

綺樹は壜を見つめたまま、どこか馬鹿にするように笑った。

この自棄酒も、自失茫然とした感じも、全て男絡みか。

昨日までの旅行は、やっぱり男が同伴なのか。

そして何かあったのか。

涼の中でどす黒いものが立ち上がり、体を占めていく。
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