”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
綺樹は涼との距離が近いことに気が付いた。
「美味いよ。
よかったらどうぞ」
ふらりと立ち上がると、若干あやしい足取りで浴室に入っていった。
涼はしばらく置かれたグラスを凝視していたが、乱暴に掴むとグラス一杯に注ぐ。
一気に飲み干してもう一杯注いだ。
ずっと、どうしていいのかわからなかった。
わからないことに疲れた。
我慢し続けることに、うんざりだった。
ゆっくりと、半分ほど開けてから、グラスを手にしたまま洗面所に入ってドアに寄り掛かった。