”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

バスローブを着た綺樹が浴室から出てきて、涼の姿に驚いて目を見開いた。

無表情で艶の無い瞳とあう。


「お先に使ったよ」


涼の雰囲気に、穏やかな口調で言い、微笑を浮かべた。


「どうぞ」


綺樹は洗面台側に身を寄せた。

寄せなければ通れない広さではないが、意思表示だった。

こういう時に相手を逆なでしてはいけない。

いくつもの誘拐を経験して、その間合いは十分に分かっていた。
< 194 / 241 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop