”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
2.綺樹 in Spain ~もう一人の男~
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仕組まれて、望まないウルゴイティ家の当主となり、スペインにやってきた。
屋敷はデコラティブな家具で埋め尽くされており、一通り見終わった後、狂気の血筋を表しているな、と綺樹は言った。
綺樹の皮肉の口調にフェリックスは面白そうに笑った。
書斎のデスクにつき、ため息をついた。
「どの家具も直線の部分が無いじゃないか。
頭が痛くなる」
「先代の妻がロココ朝趣味だったんだ。
諦めろ」
そっけない口調に、綺樹はぴくりと眉を動かし、当主の権限で全ての家具を屋根
裏にあった簡素な家具を入れた。
どれもマホガニー製で、天板に大理石がはめ込まれているなどの物ではあったが。
次の日に現れたフェリックスは少し眉を動かしただけだった。