”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

そうだった。

表向き夫婦関係を提案したのは綺樹だった。

今回のことも、何でもなかったことにするつもりか。

そもそも男と寝るのには慣れている。

無理やりのも既に経験済みか。

涼は顔を反らせた。


「経営者として海外との接点が増えるから、シェイクスピアやギリシャ神話、詩などもよく読んでおくといいよ。
 本当は暗唱が出来て、引用できればベストなんだけどな。
 有名な演説なんかも、結構いい。
 あ、原文でだぞ。
 基本的なところで、聖書は大丈夫だろうな?」

「いい」

「ん?」


涼は顔を真っ直ぐに綺樹に向けた。

憎しみ満ちた瞳と、きつく結ばれたくちびる。
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