”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
10.特別な存在
*
祖父が死んだのは、涼が家を飛び出して3日後だった。
成介から連絡をもらって、駆けつけた時には、既に息を引き取っていた。
部屋に飛び込むと、枕元に立っていた綺樹が顔を向ける。
涼が歩み寄ると、後ろに退いて場所を開けた。
「ごめん。
間に合わなくて」
祖父を見降ろして涼は呟いた。
「おまえが、こっちに向かっているって言ったら、ちょっと笑っていた。
十分、嬉しかったと思う」
いつも通り、胸にすとんと落ちる声が背後からした。
半分だけ顔を向けると、微妙に焦点を外した、静かな目と合う。