”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

毎晩、屋敷に帰ってきているようだが、再び涼と顔を合わせたのは、一族だけの
密葬の日だった。

喪主の妻として葬儀の部屋に入ると、葬儀会社と最終打ち合わせをしている中、一瞬だけ目が合った。

いい瞳だ。

今まで立場的、色々な人物に会ってきた。

本人が望めば、経営者として名を馳せるだろうに。

祖父の最後を看取ったのは綺樹だった。

祖父が語らず目で伝えようとしていたことはわかっていた。

でも本当に理解しているだろうか。

綺樹はずっと逡巡していた。
< 212 / 241 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop