”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
毎晩、屋敷に帰ってきているようだが、再び涼と顔を合わせたのは、一族だけの
密葬の日だった。
喪主の妻として葬儀の部屋に入ると、葬儀会社と最終打ち合わせをしている中、一瞬だけ目が合った。
いい瞳だ。
今まで立場的、色々な人物に会ってきた。
本人が望めば、経営者として名を馳せるだろうに。
祖父の最後を看取ったのは綺樹だった。
祖父が語らず目で伝えようとしていたことはわかっていた。
でも本当に理解しているだろうか。
綺樹はずっと逡巡していた。