”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

葬儀だというのに、喪主の妻として涼の隣で過ごした一日は幸せだった。

こんなに長い間、一緒に過ごすのは何年ぶりだろうか。

念仏を聞きながら数える。

2年・・?

見納めが近いのがわかっているだけに、半歩後ろから、思う存分、涼の顔をみつめる。

涼にとって祖父は唯一といっていい肉親だった。

それを亡くしても、葬儀の間、凛として精悍な顔を崩さなかった。

横にある腕に自分の腕を絡ませたくなる。

同じ指輪のはまっている手をみると、つなぎたくなる。

そばにいる方が苦しい。

幸せなのに苦しい。

もう止めてしまいたい。

本当の夫婦の関係になってもいいじゃないか。

私が、大学の勉強も社長業も支えれば、涼の人生はそれなりに幸せじゃないか?
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