”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
葬儀の後、まだまだやることのある涼を残し、一人屋敷に戻った綺樹は、ずっと迷い続ける。
リビングのドアがノックなしに開いた。
「まだ、起きてたのか」
涼は疲れ切った様子でぽつりと言った。
「ああ、まあ」
当分は帰ってこないと思っていたので、とまどいがちに答える。
咎められる前に、吸っていた煙草を消した。
古すぎた煙草は、やはり香りが落ち、不味かった。
その様子をちらりと見て、涼は落とすように手にしていた上着とネクタイを、ソファーに置いた。