”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

一気に疲れが出たのか、やつれた顔は半分うつむきがちだった。

弱っている雰囲気に、近づいてきても、あの夜のように綺樹に警戒心は起きなかった。


「なに読んでいるんだ?」


綺樹はソファーに横たわりながら、本を読んでいた。

さっきからの物思いで、頭に全く内容は入ってきていなかった。


「経済学?」


背表紙を読んで、涼が眉を曇らせる。


「読む本が無くなって、おまえの書斎に置いてあったのを、勝手に借りた。
 原書を読んだことがあるので、日本語ではどう書いてあるのかと思って」

「それ大学の教科書だぞ」


呆れたようにため息交じりに言うと、自然な感じで綺樹の足をソファーの背の方に押しやり、空いたスペースに腰を下ろす。

そのまま、毎晩しているかのように、綺樹に上体を重ね、首筋に顔をうずめた。
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