”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
「駄目。
想像できない。
口説くより罠にはめるしか想像できない。
もしかしてはめたの?」
「綺樹。
仕事をしろ」
強い口調で言われて肩をすくめた。
「でも、フェリックス。
私が誰かと結婚して、おまえを追い出すことを画策したらどうするの?」
目が笑いながら挑むように光っている。
フェリックスは鼻先で笑った。
そう、だから自分は迷っているのだ。
綺樹の涼への想いを断ち切ってしまうことに。
その想いを、消さぬよう、煽らぬよう、上手く綺樹の中にくすぶらせる。
そうすれば綺樹は誰とも結婚しないだろう。