”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
「仕事、してる。
ほら、このスペイン政府経由の美術品貸し出しの件。
OKを出した」
綺樹は書類をフェリックスの目の前のテーブルに放った。
フェリックスの眉が曇った。
日本の美術館が主催する美術展への協力要請。
「値段はふっかけといた。
欲しいだろ。
外貨」
「あまり賛成しない」
綺樹はこれを理由に日本へ行くだろう。
「そう?
貸し出すときに帳簿と照合ができる上、得られる金で美術品管理についてはデーターベース化する。
その人員と費用も含めておいた。
ちょうどいいだろ?」
そこまでのいい条件で反対する理由はない。
フェリックスは肯定するしかなかった。
たとえ嫌な予感がしても。
瀕死のウルゴイティを救うことが、第一だった。
とりあえず、今は。