”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
涼は片手で額を覆ってふっと笑った。
ロンドンの病院で最後に言った礼は、別れの言葉だ。
とっさに、いつでも連絡して来いと言い、ここはおまえの家だと言って、かろうじて繋いだ。
繋がったのだろうか。
いや、綺樹をなんでもない存在にするなら、なぜ繋げたんだ。
だがそもそも別れるという関係だったのかもわからない。
また思考が原点に戻る。
自分と綺樹はどういう関係だったのか。
買って持ち込んだ食べ物が足りず、涼はキッチンで料理をしながら、うつうつと考えていた。
麻美子が時々やってきて絡んでくるが、こういう思考状態の時は鬱陶しい。
再び絡んできた時、インターホンが鳴ったのを幸いに、キッチンを出た。