”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
「仕事で一月ほどいるから」
「ああ、そうか」
自分の気持ちが一瞬浮上し落ちたのに、苦く思う。
綺樹は玄関に置いてある靴の数に立ち止まったままだった。
「友達が遊びに来ているんだ。
嫌なら帰ってもらうけど」
「私は構わないけど」
語尾が濁る。
言いたいことはわかる。
カギを持っているのに、わざわざインターホンを鳴らした時点で、察しがついていた。
女がいたら、と思ったのだろう。
その遠慮深さに腹が立つ。
おまえの家なんだから、堂々と入ってくればいいだろうと言いたい。