”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

綺樹は会場に美術館館長と共に現れた。

アイボリーのシルク地に、華やかな色彩で大きく花柄がプリントされている、体にぴったりとしたドレス姿だった。

パリのプリントで有名なブランドのだろうか。

こういう機会に出ることが多くなっていた涼は、だいぶ詳しくなった。

品の良し悪しについての目も肥えてきた。

綺樹の姿は色彩については派手だが、品は悪くなかった。

そして綺樹の色味の少ない服装を見慣れていた涼にとっては、その鮮やかなドレスを着ていることに、当主という地位についたことを改めて実感させられる。

生まれながら、やがてはその地位に就くように、愛され恵まれて育てってきたような、華やかな雰囲気。

いつも二人きりで過ごしている時の、どことなく影を感じさせる雰囲気とはまるで違っていた。
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