”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
4.罠にはめる男
*
フェリックスは階段を見上げた。
綺樹がゆっくりと上っている。
やがて上がりきると、右に曲がっていった。
その先は書斎だ。
フェリックスはため息をつくと、使用人が差し出していたコートを戻すように言い、階段を上がりだした。
フェリックスはこの屋敷で暮らさず、少し離れた街に家を借りている。
朝食を食べた後に出勤し、夕食を食べた後に帰宅する。
今夜もいつも通り帰ろうと思ったのだが。