”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

ノックしてから返事を待たずに書斎のドアを開けると、煙草をくわえて机に向っていた綺樹が顔を上げた。

ドアの外にも漏れていた、大音量の音がフェリックスに体当たりしてくる。

丁度、パパゲーノがしゃくりあげるようにして、歌っているところだ。

綺樹はリモコンを取り上げ、音楽を止めると、煙草を指に移した。


「忘れ物?」

「私は。
 おまえが子供ではないと思っているから、スケジュールを渡しただけにしているが、もしかしたら、逐一管理しなければいけないのか?」


綺樹はフェリックスを見つめながら、しばらく煙草をくわえていた。


「それは違うな。
 子供ではないから、スケジュールの中身について判断をし、取捨選択をし、実行するんだ」


しばらくの沈黙の後、フェリックスはため息をついた。
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