”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
「綺樹。
少し、飲もう」
プライベート用のリビングへ続く、もう一つのドアを開けた。
綺樹が来るのを待っている。
フェリックスの威圧的な雰囲気が薄らいでいたこともあって、綺樹は煙草を消すと立ち上がった。
「日本はどうだった?」
暖炉の前の一人がけソファーに座っていると、ブランデーをなみなみと注いで渡される。
こんな注ぎ方をする酒じゃないだろうと思ったが、飲むのが好きな綺樹は何も言わなかった。
「あんなもんじゃない?
客の入りはいいみたいじゃないか。
これでウルゴイティ美術館の名も少しは知名度が上がり、観光客を引っ張れる。
なぜ?」
自分はブランデーに適した量のグラスを手に、もう一つの一人がけソファーに腰を下ろした。