正夢絵本
沙耶は慌てて鞄の中身を掻き回した。しかし自分が探し求めるものは見当たらない。


「忘れたの!?」


沙耶は無言のまま頷く。


「あっそうだ。昨日パソコンの上に置いたまま鞄に入れ忘れたんだ……。」


もはや沙耶には生気を感じられない。
それもそのはず、実は今日の考案会は実力派の若手社員ばかりを集め、上層部の方々に実際自分の意見を聞いて貰えるまたとないチャンスだったからだ。


「ちょっと、沙耶大丈夫!?」

「…………だ……め………」


中原が心配し沙耶の体をゆするが、体は虚しくもただ左右に揺れるだけであった。



(あーあ……。今日の考案会、明日に変更にならないかなぁ……)



沙耶は死んだ魚のような目をしながらそんなことを思った。

ちょうどその時、部長が部屋に入ってきた。


「おはようございます。」


沙耶と同じ部署にいる人たちが次々に挨拶をしていく。


「うむ。皆、おはよう。」


そう言うと彼は自分のスーツの内ポケットから手帳を取り出した。
そしてそのまま沙耶の方へと向かい、彼女の前で停止した。
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