正夢絵本
「これはあんたにやるよ。」
「えっ…」
「こんなへんてこな本じゃ売れないからな。」
老人は微かに笑った。
「あっすみません…ありがとうございます。」
沙耶はお礼を言うと、差し出された本を受け取り鞄にしまった。
外を見るとすっかり雨も上がり、夕日が赤く辺りを染めていた。
店を出る際にもう一度お礼を言い、沙耶は古本屋を後にしていそいそと家路についた。
「なんで全部のページに何も書いてないんだろう…」
家に帰り早速貰った黒い本を開き、隅々までチェックしてみた沙耶だが、やはり3ページ目の『貴方の望み叶います』という文字以外何も書かれていなかった。
「あのおじいさんも知らないし、この本何なんだろう……」
何度見ても白いままの紙を飽きずと何回も何回もぺらぺらとめくった。
しかし、さすがに5回目で飽きた沙耶は本を開いたまま机を離れてベッドへと向かった。
「まぁいいや。どうせただで貰った本だから損した気分じゃないし。そのうち日記にでも使おうかな…。」
独り言を言いながら大きく伸びをし、ベッドへとダイブした沙耶はそのまま意識を手放した。