天国と地獄の境界線がなくなる前に僕はもっとやるべきことがあったのかもしれない
飛び起きて座っていた椅子を咄嗟に持ち上げて鬼に投げつけた。

鬼が小さいヤツでよかった。

鬼が両手で顔を覆っている隙に、その横をすり抜けて玄関のドアまでダッシュをした。膝関節がポキポキと鳴る。

玄関のドアを開けて逃げる。久しぶりに、お外の空気に触れた。つうか、ついてくんなよおまえ。

小太りの天使は仰向けに寝た状態でこちらを見て、笑いながらスィーと飛んでついてきた。

「おまえ、おもしろいよ。これからもっとおもしろくなるよ。もっとぼくの仲間を呼んでこようか?」

天使の顔つきが少し変わったのが恐ろしくて「いえ、それだけは、かんべんしてください」とこんなちいさいやつに敬語だ。プライドなんてない。とっくにない。

とっくにないはずなんだけど。

だけどこのなんか減ったような気分はなんだ?

とにかく走った。



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