天国と地獄の境界線がなくなる前に僕はもっとやるべきことがあったのかもしれない
「おう、いいか。一回しか教えない。これをこうやってここを引くと弾が出る。あと5発ある。大事に使え」

「はぁ」

「あとは余計なとこ触るな。ロックは外れてるからすぐ暴発するぞ」

黙っているとまたビンタをされた。

「いいからはやく乗れブタ!」

後ろにまたがるとバイクはホイルスピンを起こしてから急発進をして鬼を一体轢き倒していった。薄いシートからお尻、背中そして脳へとひき殺したという嫌な感覚が伝わる。

髪の毛についたビシャビシャがどんどんと後ろに飛ばされていった。


二人乗りのバイクには鬼はどうすることもできずに結局、一発も打つことはなく僕の通っていた高校に雰囲気の似た場所でバイクは止まった。

「どうして僕を助けてくれたのですか」という気になる事をそのまま聞いた。

女の人は逃げなかったからだよと答えてくれてた。


逃げなかったんじゃなくて、足を掴まれて逃げることができなかったのだということが言えずに握手を求められた。その手を握ると僕の目から涙が溢れて立っていることもできなくなった。

人に触れたのは、いつぶりなんだろうか。

案の定、鬼は現れて、女の人は銃をぶっぱなしてから建物の中に走っていくのを懸命についていった。





< 15 / 19 >

この作品をシェア

pagetop