短編集
01
嫌い嫌いと言いながら離れられないのが双子だと誰かが昔に言っていた。他人は羨み当人同士は嫌がっている。そんな関係。
どうせ双子に生まれたのだから仲良くすれば良いものを、ヤツラは頑として互いを認めないし、目が合えば睨み合っている。
「なあ、お前らいい加減にしたら?」
「この馬鹿弟が止めたら止める」
「この兄貴気取りが止めたら止める」
友人Aとして進言させていただきたい。とりあえず俺を不毛な争いに巻き込むのは止めてくれ。なんて、言った所で終わらないのは目に見えているから言わないが。
「いや実際に俺、兄だから」
「俺は認めてない」
「認めて無くても兄なんだよ」
「黙れ馬鹿野郎」
罵りあいの止まらない口。
友人歴の長い俺でも喋らなければ見間違う顔。そして彼らの手が取り合う意中の相手はコンビニに行けば二百円も出さずに買えるプリン。
俺はため息をついた。
「それ弟が買ってきたやつなんだろ。離してやれよ、一応兄ちゃんなんだから」
「でもこの前俺が買ったプリン食いやがったぜ、こいつ。だからこれはその分だ」
「お前何言ってんの。どこの餓鬼大将ですか。変な理屈出して来てんじゃねぇよ」
「いや餓鬼大将はお前だろ。お前のプリンは俺のもの、俺のプリンは俺のものってか。馬鹿じゃねぇのかお前、さっさと寄越せ」
学校が終わって遊びに来いよと兄の方に誘われ、偶然一緒になった弟と一緒に彼らの家に行ったら、先に帰っていた兄がプリンを食おうとしていて。弟はそれを見るなりプリンのカップを手におさめ、兄はまた取られまいとカップに力を入れた。
どうだろうかこの不毛な争い。
そして完全に巻き込まれてしまった不運な俺。誰か助けてくれないかな。何でこの家の両親はこんな問題児を二人も家においてお気楽にデートなんてしてるんだ。全く。
「馬鹿はお前だ。兄だとか言う癖にテストの点で俺に勝てた事ないくせに」
「その代わり俺は運動出来るからいいんだよ。お前持久走最下位だったろ馬鹿が」
遊びって何。
お前らの喧嘩見学だったの?
それ知ってたら遊びに来いよと誘われた時点でお断りしてますけど。って言うかこの口論いつ終わるんだ。プリンくらいもう一つ買ってくればいいじゃないか。何なら俺が買ってやる。
むしろ母ちゃんか父ちゃんに買って帰ってきてもらえよ!
「……なあ、お前ら双子なんだから――」
「ガキみたいな返し方するなよ」
「ガキはお前だろ」
「大人振んなよ。空振りしてるぞ」
「空振りなんかするか。俺はいつでもホームランしか打たねぇよ、お前と違って」
「は? 意味分かんねぇ事言うな」
「あーあー悪い悪い、お前みたいな馬鹿には何言っても通じねぇもんなあー」