男子二人、女子一人。健全なる共同生活。
斜め後ろの人物は、細い手首を伸ばして礼音の横にある灰皿に、自分の吸っていたタバコの灰を払いました。


延びてきた細い手は、水仕事などしたことがないのではないかとすら思えるほど手入れされ、上品なラメジェルで爪を飾り、手首には(礼音には分かりませんでしたが)カルティエが女性向けに出した繊細な時計がはめられていました。


女子に話しかけられるのは慣れています。
あしらうのも慣れています。


けれど、礼音は予想外の人物に話しかけられ、返事ともいえない返事をしました。

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