男子二人、女子一人。健全なる共同生活。
「……小笠原さん!」

礼音は清花を呼び止めて、慌てて言いました。

「犬飼くんと、実験班同じなの?」


自分でも驚くくらい、慌てた声でした。
けれど清花は、動じることなくゆっくりと、長い長い黒髪を揺らさずにもう一度礼音の方に向き直りました。


「来週からの、有機化学実習1、犬飼くんと同じ班になったの」


薬学部では、二年生になると週の3日は、午後が実験です。

残りの二日は一般教養もあり、少し離れたキャンパスまで、みな自転車で登校していましたが。


「……あぁ、えーと……」
礼音は何を言っていいか分からず、そもそも自分がゲイだと始めて見抜いたこの学年一の変人、もとい美女の前でうろたえました。


……くすっ

清花は誰にも微笑んだことがなかったのに、そんな礼音を見て微笑んで、言いました。

「話せたら、犬飼くんにつなげたげる」
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