青空バスケ―another story―
部室を出ると、七海がボトルを運んでるのが見えた。
ヨタヨタしながらあるく七海。
そんな危なっかしい七海に小さく笑いながら近寄っていった。
ひょいっと七海の持ってるものを全部取り上げた。
「ハル君!?」
「手伝うよ」
「え、でも……」
「いいから」
「……ありがとう」
ふわりと優しく笑う七海。
その笑顔が見れただけで十分だ。
「これで最後だから大丈夫かなぁって思って香織と萌りんには先に戻ってもらったんだけど、やっぱ無謀だった」
「あんまり無理しないようにな。
明日もあるし」
「うん、ありがとう」
ボトルをいつもの位置に置いて乾かす。
うん、これでOK。
俺も去年はよくやったな~……。
ウチはマネージャーがいないから、一年生がこういう雑用を交代でやることになってる。
だから今の二年も全員が経験済みだ。
「ね……ハル君」
「ん?」
「今日は……その……イッ君達と帰るの……?」
だんだんと小さな声になっていく七海。
でも、目はしっかりと俺を捉えていた。
「せっかくのイブに男だけで過ごすのは……悲しすぎでしょ」
「え?」
俺は七海の方へと手を差し出した。
「一緒に帰ろう」
「ハル君……」
「そう言いに来たつもりなんだけど。
……七海は?」
……七海は俺が差し出した手を見ながらにっこり笑った。
そして……ギュッと手を握られた。
「……あたしも、です」
少し上を向いた七海と目が合った。
……目が合うと同時に二人で笑い合った。
「あたし、着替えてくるね」
「あぁ。待ってる」
少しだけ歩き出した七海が、突然足を止めて振り返った。
「ハル君」
「ん?」
「大好き!」
……七海はそれだけ言うと、小走りで更衣室の方へ行った。
残された俺は……
「……今のは反則」
一人顔を赤くして突っ立っていた……。