青空バスケ―another story―

「……やっぱ、七海に電話してよかった」

「あたしにできることだったら何でも言って。
困ってるときはお互い様でしょ?」


そうだな、とハル君は笑った。


「七海はいい母親になりそうだな」

「慣れてるだけだよ。
あたしは海里の母親代わりですから」

「そうだったな」


いつものように優しく笑うハル君。


「……あたし、ちょっと心配してた」

「ん?何を?」

「今日ね……ハル君達が話してるの聞いちゃったんだ。
同棲とか……一緒に寝たとか……」

「あぁ……あれね」

「あれ、栞奈ちゃんのことだったんだね。
何か一人で勝手に心配して……ごめんなさい」


何かハル君のこと疑ったみたいになっちゃって……。


「別に謝らなくても……。
……ま、栞奈には相手がいるから。
ご心配なさらずに」

「あ、ハル君のイトコ?」

「そう。
……アイツも心配してるんだろうな~」

「やっぱり好きな子が少しでも遠くに行っちゃったら不安になるのかな?」

「そりゃそうだろ。
俺だって七海が俺の知らない遠いところに行ったら心配だし」


ハル君の知らない遠いところ、かぁ……。


「大丈夫。
あたしにはそんな予定微塵もないから」


何の根拠もなしにそんなことを言った。


この先、何が起こるかなんて分からないのに。


何も知らずに笑い合っていたあたし達は……本当に幸せだった。


この幸せが壊れる日が近づいてるとも知らずに……。


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