青空バスケ―another story―
あたしは桜の木に近づいて、そっと木の幹に触れた。
「この木……ずっと残ってるといいね」
「俺達が初めて将来について語った記念の木?」
「何それ」
ぷっとあたしが笑うと、ハル君もあたしにつられて笑いだした。
「そしたら、この木はあたし達の青春の1ページだね」
「あの頃は若かったな~……なんて、この木を見ながら思い出すんだろ?」
「それ、何年後の話?」
「意外とすぐかもしれないじゃん」
「え~……そんなすぐにおばさんに近づいていくのかな~……」
もうちょっとゆっくりでいいよ。
学生をもう少し楽しみたいもん。
「七海」
「ん?」
振り返ると、ハル君がそっとあたしの髪に触れた。
「ハル君……?」
「ほら」
ハル君の手のひらには一枚の花びらが載っていた。
「……そろそろ帰るか」
「うん」
チョンチョンとハル君の手をつつけば、ハル君は優しくあたしの手を握ってくれた。
二人手を繋ぎながら桜の木を後にした。
この木が後々……あたし達にとって大切な存在になるとは……想像もしていなかった。