青空バスケ―another story―
「でも……できなかった。
知り合いがお見合い写真とか持ってきてくれたり、実際にお見合いもしたんだけどね。
……どうしても一歩が踏み出せなかった」
「……奥さんのことが忘れられなかったんですよね」
俺がそう言うと、お父さんは少し驚いたような顔をした。
「……前、七海から聞いたんです。
お父さんとお母さんは本当に心から愛し合っていたって……」
「……そっか。
七海がそんなことを……」
「……部外者の俺が言うことじゃないとは思うんですけど。
……お父さんが子供達のために無理をして再婚をしても……七海は喜ばなかったと思います」
お父さんは俺の顔を見て、ゆっくりと微笑んだ。
「陽斗君は本当に七海のことをよく見てるんだな。
……さすが彼氏といったところか」
「え……ご存知だったんですか?」
「気づかないわけないよ。
海里と一緒に陽斗君の話をしてる七海は本当に幸せそうな顔をしてたから」
そう言ってお父さんは優しく笑った。
「だから……七海にはついてこなくてもいいって言った」
「え……?」
「自分で決めなさいって……。
七海には自分の人生を生きてほしい。
それでもついてくると言うなら一緒にパリに行く。
陽斗君といたいならここに残ってもいい。
……ここからは七海の決めることだ」
パリか東京か……自分で選ぶ……。