青空バスケ―another story―
「何かあったの?」
おばさんが俺の向かいに座った。
……おばさんなら……いいかな。
「……約束を破るって悪いことだよな」
「まぁ……そうね」
「……その約束を破って……自分が楽になろうとしたら、それは裏切りになると思う?」
おばさんはコトッと小さく音をたててコップをテーブルに置いた。
「楽っていうのは幸せになるってこと?
……だったら、それは裏切りにはならないんじゃないかしら」
俺は思わず目を見開いたままおばさんの顔を見た。
「陽斗と約束してる人っていうのが女の子なら……尚更ね」
おばさんは静かに優しく微笑んだ。
「……もう七年も会ってないんだ」
「七年……。
てことは、高校生の時から?」
俺はゆっくりと頷いた。
「……高三の春に父親の転勤でパリに行っちゃって。
……約束したんだ。
ずっと待ってる……って」
「………そう」
……あの頃は若かった。
何も分かってなかった。
離れる……ってことを。