青空バスケ―another story―
女の人はそのままハル君の腕に抱きついた。
「香田……?
今日は来ないんじゃ……」
「陽斗が行くって聞いたから来ちゃった!」
「来ちゃったって……」
「男ばっかりより女の子がいた方がいいでしょ?」
「相変わらずだな」
ハル君は小さく笑うと、女の人の腕をほどこうとせずにそのまま座敷まで歩いて行った。
「お、香田!
来たのか!」
「はい!
お邪魔しまーす」
「浦山~、お前も隅に置けないな~」
「聞いてくださいよ、先輩。
陽斗ったらまだ名前で呼んでくれないんですよ~!」
「はは!
浦山、亜美ちゃんが嘆いてるぞ~」
……ここまで聞こえてくる、楽しそうな話し声。
やっぱり……そうだったんだ。
「伊沢………?」
「……ごめん。
あたし……もう帰るね」
「え?」
「お金は置いてくから……。
じゃあ……また明日」
「おい、伊沢!!」
久坂君が止めるのも聞かずに、あたしは店を出ていった。
これ以上……あの場にいたくなかった。