青空バスケ―another story―
「伊沢?」
突然誰かに名前を呼ばれた。
ちょっと上を見ると、風見君が不思議そうな顔をしながらあたしを見ていた。
「陽斗は?」
「女の子に呼ばれて……」
「……あぁ。
いつものか」
いつものって……そんなによくあることなの?
「そろそろ陽斗が苦しんでる頃かなーっと思って来てみたんだけど。
伊沢が手伝ってたのか」
そう言いながら風見君はハル君の席に座ってホッチキスを手に持った。
「あれ?
逃げたんじゃなかったの?」
「俺は元々戻ってくる気だったし。
イツは……本気で逃げただろうけど」
あぁ……イッ君はね。
しょうがないよ。
だってイッ君だもん。
「で?」
「で……って?」
「伊沢は何でそんなに落ち込んでんの?」
「え……」
あたしの目の前の風見君は全てを見透かしたように笑っていた。