青空バスケ―another story―

「海里の名前にはね、もう一個意味があるの」

「え?」


お父さんが教えてくれた。

海里の名前に込められた想い……。


「あたしのお母さん、里美っていうの。
だから、お母さんみたいな優しい人に……誰からも愛され、愛せる人に育ってほしいって……お母さんの名前から一字取ったんだって」


そうあたしに話してくれたときのお父さんは笑ってたけど……どこか寂しげで、切なかった。


「……本当はお母さんが死んで一番辛かったのはお父さんだと思うんだ」

「え……?」

「あたしも辛かったけど……でも、お父さんはそれ以上に辛かったんだと思う。
……本当に愛してたの、お母さんのことを」


小学生ながらに思ってた。

友達から他の家の両親の話を聞いても、自分の目で見てもウチの両親は仲が良すぎるって。

でも、それがあたしの誇りで……大好きなお父さんとお母さんだった。


「お母さんが死んだとき……お父さんはあたしの前では泣かなかったんだ。
最初は泣く暇なんてないからだって思ってた。
あたしはお母さんがいなくなって元気なかったし、海里が生まれたばかりで大変だったから。
……でも、違った」


あたしは七年前の出来事を思い起こした……。

あの時の……お父さんを。

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