青空バスケ―another story―

「あたしが夜中に目を覚ましたときにね……見ちゃったんだ。
お父さん、お母さんの仏壇の前で……泣いてたの」


今でもはっきりと覚えてる……。

あの時のことを……。


「ずっと泣いてた……。
あたしが見てることも気づかずに……ずっと。
その時、やっと分かったの。
お父さん……ずっと我慢してたんだって」


泣くわけにはいかなかったんだ。

きっとお父さんが泣いたら……あたしも涙が止まらなくなってたから。

お父さんが泣いたら……家の中が暗くなってしまうから。


我慢してなきゃいけなかった……。


本当は誰よりお母さんを愛していて……誰より辛かったはずなのに。


「……あたし、その時思ったの。
こんな風に心から悲しんで泣いてくれる人がいてくれるなんて……お母さんはきっと幸せだろうなって」


お母さんは幸せだったはず。

愛する人に囲まれて、死を悲しんでくれる人がいて。

生んだばかりの息子の成長を見届けられなかったのは残念だけど……

それでも幸せだったはず。


「……あたしもそんな人と結婚できたらいいなって。
そんな風に泣いてくれる人に出会えたらいいなって……思うんだ」


あたしの理想はお父さんとお母さん。

大好きな……お父さんとお母さん。


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