青空バスケ―another story―
「陽斗はバスケは上手いけど……そんなに器用じゃない。
でも責任感が強いから、一人で何とかしようとする。
……多分だけどさ。
絶対ミスできないとか思ってる。
自分が足引っ張っちゃいけないとかさ……そんなくだらないこと」
風見君はふぅっと息を吐いた。
「……バスケはチームプレーだっつーの。
一人のミスはみんなのミス。
アイツ個人の問題じゃないって……」
「部長って……そんなに大変なの?
あたし、部活とか入ったことないからよく分かんないんだけど……」
「ウチは部員も多いし、大変っちゃあ大変だけど……。
陽斗が思ってる程では………まぁ、陽斗にそんな風に思わせたのは俺達なんだけど」
エースで次期部長で。
部員全員から絶対的な信頼をおかれてるハル君のプレッシャーがどれ程のものなのか……正直、あたしにはよく分からない。
でも………
「……ハル君は自制できないほど、追い詰められてるんだね」
「部外にも陽斗が次期部長だってバレたし。
学校全体からの期待背負わされてるわけだからな……。
俺だったら耐えらんねぇよ、そんな状況」
あたしだって無理だよ……。
みんなは当たり前のように勝ち進んで行くと思ってる。
でも……その勝ち進んでいくことがどれだけ大変なことか。
東京でたった三校しか出れないんでしょ?
その切符を手にいれるためにみんなが……ハル君がどれだけ努力してるか……。
予選で負けてはいけない。
ハル君が負けるはずがない。
みんなにそう思われてる中でプレーするのって……精神的にも辛いはず。
「……伊沢」
「あたしでよかったら力になるよ」
あたしがそう言うと、風見君は安心したように笑った。