青空バスケ―another story―

「……監督」


監督は呆れたようにため息をつきながら俺に近づいてきた。


「そんな気持ちのままじゃ、入るもんも入らなくなるぞ」


そう言いながら、監督は落ちたボールを拾って綺麗にシュートを入れた。


「……何しに来たんすか」

「ウチのバカな部員が遅くまで練習してるって聞いたからな」

「……すみません。
もう帰りますから……」


ボールを拾って部室の方へ歩いて行こうとすると、後ろから声をかけられた。


「ついこの前までは持ってたのにな」

「え……?」

「今のお前にはない」

「何の話で………」

「正直に言う。
小学生の方が今のお前より断然上手い」

「っ…………!!」


……何なんだよ。

わざわざ嫌味言うために来たのかよ……。


分かってるよ……今の俺が全然ダメだってことぐらい。

そんなの……自分が一番よく分かってる。


「お前は大事なものを失った。
小学生でさえ持っている……大事なものを」


それだけ言って監督は体育館から出ていった……。

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