メルヘン侍、時雨れて候
「ご隠居、正解ってのはあるんですかい?」

ご隠居は頷いた。

「そうじゃね、正解なんてない。あるとすれば、わしが感心するとか、納得するとか、笑ってしまうのか、そのいう類のモノじゃろうて」

感心とか納得という言葉。メルヘンさんは考えた。

「僕は、ぼやかす事と照れ隠しで“なんとか”とぼやかしました」

ご隠居は頷いて、それで? と続きを促した。

「確かに僕の書くポエムや短編は書ききらないモノがほとんどです。ほとんどでした。どうとも取れる。それじゃだめなんでしょうか?」

「わしがつまらんと言ったら?」

「そ、それは」

「さっきのは、わしに言った言葉だよね? それとも、ひとりごと?」

意地悪な顔をしている。

「いえ」

「わからないから聞いてる。つまらないから」


「そ、そうですか」

「わしはメルヘンさんよりも沢山のモノは知っておるし、経験も積んでいる。だけど古い。それは自覚はしている。それに、わからないことも感じ取れないこともまだまだある。だけどね、言おうとしてためらったことや、たとえば書いて削ったものと、あらかじめ書いてないものの区別ぐらいはつく。だから聞いた。なんとかって何だ?と」

またその事かとメルヘンさんは俯いてしまい。その肩は震えた。
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